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みんなの「SF」ブログ


ロバート・A・ハインライン「月は無慈悲な夜の女王」

2006/10/01 23:18
ロバート・A・ハインライン「月は無慈悲な夜の女王」(矢野徹訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。'66年発表、'68年ヒューゴー賞受賞作。

2076年の、流刑者とその子孫からなる住民が暮らす月が舞台です。
植民地として地球から搾取されるだけ搾取されている月世界の経済的破綻まであと7年。
これを予測した高性能コンピューター『マイク』の『親友』であるマヌエルは、美貌の運動家のワイオ、理論家デ・ラ・パス教授とともに生き残る道を辿ることを決意します。
生き残る道、それは地球からの独立を意味します。

マヌエルがその代表者として祭り上げられます。
その理由は月世界の心臓部ともいえるコンピューターのマイクと最も仲が良いのが彼だから。
マイクとはマイクロフトの略で、シャーロック・ホームズの兄の名です。
マイクロソフトではありません(笑)。
自意識を持ったコンピューターで、けっこう気が利く奴です。

興味深かったのは教授の示した、革命のための組織作りの方法。
ここで詳しくは言いませんが、ほう、こうやるのかと勉強になりました。
実生活で役立つことはなさそうだけれど。

あと文句をたれておくと、訳文が読みにくい。
わたしだけかも知れませんが。
何故か読了するのに三週間も掛かってしまいました。
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ジャック・フィニイ「レベル3」

2006/09/16 23:00
ジャック・フィニイ「レベル3」(福島正実訳/早川書房)を読みました。

ニューヨーク、グランド・セントラル駅には地下2階までしかないはず。
しかし彼は構内で迷い、地下3階に出てしまいます。
そこあったのは19世紀末のホーム。きっとここから『あの場所』へ行けるはずだと彼は考えます。
彼は夢想します。
あのホームから妻と、子供の頃祖父から聞かされた、平和と幸福の象徴である1894年の―微風の街―ゲイルズバーグへ向かうことを。
(「レベル3」)

収録されているそのほとんどが過去への憧憬とタイムスリップをモチーフにした短編集。
ジャック・フィニイという小説家はミステリもSFも書いていますが、一般的にはやはりファンタジー系の小説家という印象が強いのではないかと思います。
というか、わたしはこのタイプのものしか読んでませんので、偉そうなことは言えませんが。

ここではないどこか、というのはSFやファンタジーに限らず魅力的な小説の素材だと思います。
しかしフィニイの作品の場合、まず過去ですね。それも19世紀末。
この短編集が発表されたは'50年代のこと。
現在彼が生きていたら、21世紀をどう思うでしょう。

当時の『現代』が嫌だと作者は考えているようですが、それでも現在を生きるわたしには、これらの作品やこの時代には牧歌的で幸福な印象があります。
登場人物たちは皆、ものわかりの良い両親、無邪気な若者、優しい妻といった感じで暖かい感じがする。
わたしなどに言わせると、'50年代のアメリカは20世紀で最も幸福な場所という印象なんですがね。
コメディタッチの作品も少なくない。

ラストに収められた「死人のポケットの中には」は秀逸な一品。
ちょっとした理由で摩天楼のアパートの窓からせり出しに降りたら、部屋に戻れなくなった男の話。
高所恐怖症の人には地獄的な怖さ。
下手なホラーより怖いです。
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フィリップ・K・ディック「スキャナー・ダークリー」

2006/09/02 16:19
フィリップ・K・ディック「スキャナー・ダークリー」(浅倉久志訳/ハヤカワSF文庫)を読みました。1977年発表。

麻薬課のおとり捜査官フレッド。ロバート・アークターと名乗り、ジャンキー連中と生活しています。
彼らの行動はアークターの家に設置された監視カメラで逐一記録されています。
警察は彼らから麻薬のルートを突き止めようとしているのです。

麻薬組織はその情報網をあらゆる法執行機関に広げているため、フレッドを始めその関係者は署内でスクランブル・スーツを身に着けています。
スクランブル・スーツを着用すると、その容姿も声の特徴も均質化するため職員同士でも互いの正体を知ることはありません。それはフレッドの上司とて同じです。
ある日フレッドは上司にこう指示されます。
「しばらくは、おもにボブ・アークターを観察してくれ」。

フレッドはアークターとして危険な任務についているのだから多額の報酬がある。
しかし当局はアークターの金回りの良さに疑問を持っているのです。
管理社会の矛盾が可笑しい。

さらに皮肉なのは麻薬おとり捜査の矛盾。
それはおとり捜査を続けてゆくうちに本人が本物のジャンキーになってしまったり運び屋になってしまったりして、『あちら側』の人間になってしまうこと。
フレッドは運び屋になったりはしませんが、ドラッグ『スロー・デス』の常用により徐々に心身を蝕まれてゆきます。

二重の皮肉と、見方を変えれば間抜けともいえる奇妙な展開。
読者は同情すれば良いのか笑えば良いのか。
ディック自身ジャンキーまで身を持ち崩したこともあるし、麻薬で数多くの友人を失っています。
この作品は彼らに向けた鎮魂歌であって決して作者としては笑えるものではないのですが。

次のセンテンスにネタバレがあるので注意してください。
中盤まではドラッグの妄想によるジャンキーたちのくだらないバカ話が延々と続きます。
読んでると馬鹿馬鹿しくでだるくて嫌になってきますね。
後半に入ると、置かれている立場とドラッグの影響のため自分がフレッドだかアークターだかわからなくなってきた彼のモノローグが続く。
彼の思考が次第に破綻してゆく有様は、例えるならダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」のダーク版という感じでしょうか。

良くわからないのはこの作品'77年に本国で出版されたのだけれど、この30年の間に三回も翻訳がされていること。
この浅倉訳は'05年発表で最も新しい。
この作品おそらく会話がスラング満載なようで、正直言うと浅倉訳は今時の日本語として少し違和感がありました。'70年代の若者の喋り方のような感じ。
浅倉氏がかなり参考にしたという創元文庫の山形浩生訳と読み比べるのも面白いかもしれません。
ここで全文読めます。http://cruel.org/books/scanner/scanner.pdf
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フィリップ・K・ディック「流れよわが涙、と警官は言った」

2006/08/19 12:55
フィリップ・K・ディック「流れよわが涙、と警官は言った」(友枝康子訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。1974年発表作品。ネタバレ注意。

ジェイスン・タヴァナーは三千万の視聴者を持つテレビショーのエンターテイナー。
ある瞬間より、彼は『存在しない男』となってしまいます。
彼のID記録は情報バンクに存在せず、出生記録もなく、誰も彼のことを知らない。
どうしていいかわからない彼は、偽のIDカードを偽造したことにより警察より追われる身になります。
そんな中、ロサンゼルス警察アカデミーのフェリックス・バックマン警察本部長は、タヴァナーに強い関心を持ちます。
タヴァナーの主張は真実なのではないかと。

この作品の主人公はふたり。
タヴァナーとバックマンです。
タヴァナーは『スィックス』という、秘密裡に行われた優生学的な実験対象の生き残りのひとり。
バックマンは優秀で権力を持った威厳ある人物。
どちらかひとりに絞ればバックマンですね。

タヴァナーが最初に登場し、その心理描写も多く、最初の100nくらいまではこの人が主人公なのだろうなあ、きっと後半で孤独感と寂寥感に苛まれて、あてどもなく彷徨するのだろうなあ(笑)と勝手に思って読んでました。
違ってたけど。

第一部はタヴァナーの困惑と逃走を描いており、ああ、またこのタイプの話か(笑)と思うのですが、第二部ではバックマンが登場した辺りから、タヴァナーが普通の人間ではないことが明らかになっていきます。これはわたし的には新機軸。
もっとも、途中からいつかの『人間と人間に近い別のものの決定的な差異』の話になってしまいますが……。

ディック作品を偏って読んできたからかもしれませんが、この人の長編は同じ作品をずっと先鋭化させながら、少しずつ設定を変えつつ書いて来たような気がします。

印象としては「高い城の男」+「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」÷2的作品。
また作中に登場する新ドラッグは「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」に出てきたそれに匹敵する、超反則的効能があります。
こう書くと何だか凄い名作の気がしてきたぞ(笑)。
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メアリ・シェリー「フランケンシュタイン」

2006/08/12 21:33
メアリ・シェリー「フランケンシュタイン」(森下弓子訳/創元推理文庫)を読みました。
1818年発表。この翻訳は1831年の第三版から。

雷鳴轟く深夜、ドイツの某研究所で鬼気迫る表情のマッド・サイエンティストが人造人間の創造に成功、フランケンシュタインと命名します。
しかしフランケンシュタインは怪力と邪悪な精神の持ち主で、生まれた直後博士を殺めると街へ飛び出します。
パニック状態に陥った街中で破壊と殺人にいそしむフランケンシュタイン。
この化け物と警官たちとの戦闘が始まり……。

……というのがわたしの「フランケンシュタイン」という作品のイメージ。
しかし読んでみると、全然違うんですよね。

まずフランケンシュタインというのは、ジュネーブに住む、向上心と希望に溢れたひとりの優秀な学生の名。
彼の好奇心によって生み出された怪物に名前はありません。
また、怪物には亀やワニほどの知性しかないと思っていたのですが、これも間違い。
誕生当初はともかく、フランケンシュタインと再開した頃には人間らしい感情と知性に加えて、強い意志を持った存在と化しています。

この怪物の悲劇は人間らしい感情を持ってしまったことから生まれます。
あまりの醜さに人から恐れられ忌み嫌われる彼は人生を呪い、自分を生み出したまま遁走したフランケンシュタインに復讐することを決意します。
無計画に通り魔のように人を殺すのではないのです。
フランケンシュタインの大切な人物を一人一人と殺し、彼を苦しめようとするのです。
一方フランケンシュタインは恋人との結婚をまじかに控えていました。

「フランケンシュタイン」はSF小説の起源と言われると同時に恐怖小説の古典でもあります。
これほど有名な作品でありながら、実際に読んだ人はあまり多くなく数々の誤解をされてきました。
ここで語られるのは好奇心からまがい物の神となってしまった男が、復讐の鬼と化した怪物から与えられる苦痛と苦悩です。
同時にそこにしか目的を見出されない醜く孤独な怪物男の不幸。

作者のメアリ・シェリーは英ロマン主義の詩人シェリーの奥さん。
これは知っていました。
しかし彼女がこの作品を書いたのが19歳の時というのは初耳。
嫌な19歳だな(笑)。
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フィリップ・K・ディック「ユービック」

2006/08/05 17:22
フィリップ・K・ディック「ユービック」(浅倉久志訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。
1969年作品。

舞台は1992年。
『不活性者』たちを用いて、エスパーたちの侵犯行為を無効化する事業をしているランシター。
今回彼に持ちかけられた仕事は一世一代の大ビジネスでした。
月で行われている大規模なの秘密プロジェクトに忍び込んだエスパーらの能力を中和して欲しいというのです。
総勢11人の『不活性者』たちとともに月の施設に向かったランシターは、相手側の爆弾攻撃を食らいます。
ランスターは死亡、彼の後釜のジョー・チップは残されたメンバーと地球に戻りますが、ほどなくして時間が退行し始めていることに気づきます。

ユニークだと思うのはメンバーたちがタイムスリップし続けているのではなく、彼らを取り巻く世界そのものが時間的に戻ってゆくという点。
しかもその境遇にあるのは彼らだけなのです。
そのうちメンバーがひとりまた一人と、謎の死を遂げてゆきます。

変貌し続ける世界で、あるときはタバコのカートン箱の中から、あるときはトイレの落書きと、手を変え品を変えランシターから送られてくる意味不明のメッセージ。
そして退行現象を無効化するという謎のスプレー『ユービック』の存在。

と長々と書いてしまいましたが、物語設定そのものが込み入っていることや『死』という概念がこの小説では通常のそれと違っていたり、上に書いたあらすじではその内容の半分も紹介できません。

何が起こっているのか最初わからないのだが、徐々に理解し始めるジョー。
ところがその解釈もまた間違っていて……という展開が何度か続きます。
ディックの他作品と比較するとかなりスリリングな部類の作品だと思います。

退行現象を起こしている敵とその動機、救いの神のような不思議なアイテム『ユービック』の謎とを絡めた展開はミステリ的です。
そういう興味だけでも充分楽しめる作品。

ちなみにカバー裏のあらすじ紹介や、訳者の解説にはネタバレがあるので要注意です。
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手塚治虫「火の鳥・望郷編」

2006/07/22 19:24
手塚治虫「火の鳥 6 望郷編 (6)」(角川文庫)を読みました。

地球から駆け落ちし、エデンという小さな星に愛の巣を構えた丈二とロミ。
そこは水もない岩だらけの不毛な世界でした。
丈二は事故死し、ロミは冷凍睡眠によって20年間眠りに就き、覚醒後息子のカインと子孫を作ることを決意します。
しかしふたりの間に生まれた七人の子どもたちは全て男の子。カインも若くしてなくなります。
子どもたちが成長する時までと、再び冷凍睡眠に入ったロミ。
しかし二度目の目覚めの後も、生まれてくるのは男の子ばかりでした。
ロミは三度目の冷凍睡眠に入ります。

次にロミが目覚めた時、土地は耕され文明が生まれ始めていました。
七人の息子の一人セブが、不定形生物ムーピーとの間に女の子を何人も作ったのがきっかけで、人口が増え始めていたのです。
伝説の女王と祭り上げられたロミですが、どうしようもない地球への望郷の想いは深まるばかりで、少年コムを連れて故郷への旅に出ます。

角川文庫版の「火の鳥」は全て読みましたが、最も切なく哀しい読後感が迫ってくる一編。
ロミは何も女王になりたかったわけじゃないんですよね。
テーマ的には『誰にもふるさとがある』というところでしょうか。

途中からロミとコムに同行する宇宙飛行士牧村が良い味出しています。
そして物語の小道具として登場するテグジュペリ「星の王子様」、これは反則でしょう(笑)。
読者を泣かせる気か……泣かせる気なんでしょうね。

手塚治虫を読み始めた頃、ガツンとやられた作品の一つです。
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「20世紀SF〈2〉1950年代―初めの終わり」

2006/07/15 23:55
20世紀SF〈2〉1950年代―初めの終わり」(中村融・山岸真編/河出文庫)を読みました。

英語圏の傑作SF短編を収録したアンソロジー、これは50年代の作品群が収録されています。「初めの終わり」という副題は、冒頭に収録されているレイ・ブラッドベリの作品名から。

今年の頭から週1、2冊の古典的SFを読んでいるのですが、現在のところはまだ50年代の作品が中心なので、個人的に興味深い一冊でした。

半世紀前の作品群ということなので、わかる人にはその古さがわかるかも知れません。
しかし新訳や改訳の効果もあってかわたし個人は、古さを感じることはありませんでした。
ラインアップ的には半分くらいは名前を知っている小説家の作品が収められており、個人的に集中的に読んでいるディックとスタージョンの作品もあります。

リチャード・マシスン「終わりの日」は、このシリーズの編集者が収録作品選択の際、同時に真っ先に名を挙げたということですが、なるほど名作。
地球最後の日の朝、破れかぶれになった末の酒とセックスのパーティから目覚めた男が目指した場所とは……。そして彼が最後に決心したこととは……。

この前クリフォード・D・シマック「中継ステーション」を読み、SFなのに牧歌的な話だなあと思ったのですが、ここに収録されている「隣人」はさらに牧歌度高し。
良いわ。

エリック・フランク・ラッセル「証言者」は、なんと宇宙人を地球の法律で裁こうとする、とんでもない設定の作品。
しかし珍品ではなく、人間の残酷さと愚鈍さ、同時に正義と心の暖かさとを感じさせる良い話。

シオドア・スタージョンの「たとえ世界を失っても」は、短編集「一角獣・多角獣」翻訳の際割愛された一編。なんでも同性愛を肯定的に書いた世界初のSF作品だそうです。
傑作ですが、この文庫本が出版された2000年頃は「一角獣・多角獣」は入手困難で幻の一冊状態だったわけで、編集者の目の付け所がグッド。

収録作品がすべて面白く、ハァ?と感じるものは一作もなし。
素晴しいアンソロジーだと思います。
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ブライアン・W・オールディス「地球の長い午後」

2006/07/08 17:02
ブライアン・W・オールディス「地球の長い午後」(伊藤典夫訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。1962年度ヒューゴー賞受賞作。

遠い未来。死をまじかに控え膨張する太陽。
自転が止まり、その半分がずっと昼間となってしまった地球。
そこは植物の王国と化し、ほとんどの動物が死滅してしまった世界。

そんな中人々はひっそりと、そして常に死の危険に晒されながら生きています。
植物たちは生き延びるためそれぞれの形で進化し、浮遊するものもいれば、歩行するものもいる。
それはまるで新種の生物の様でもあります。
こんな変態的な植物が次々と登場します。

主人公はグループから離脱した、はねっかえりの少年グレン。
旅の途中で出会った他の部族の少女、ヤトマーとともにサバイバルの旅を続けてゆきます。

この作品の魅力を考えるに、徹底した物語世界の構築度の高さが指摘できると思います。
物語興味という点についてはあまりピンと来ませんでしたが、先にも書いたように奇妙な形に進化した動植物や人類(のようなもの)の数々や、圧倒的に異様な世界を創造したその想像力に驚かされる。

面白かったかどうかと問われれば、一読者のわたしとしてはあまり面白くは感じませんでした。
ただ、オールディスと同業者(小説家)がこの作品を読んだとき、嫉妬したり、悔しがったり、憧れを持ったりすることは想像に難くはないだろうと思いました。
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アイザック・アシモフ「ファウンデーションの彼方へ」

2006/07/01 19:55
アイザック・アシモフ「ファウンデーションの彼方へ〈上〉―銀河帝国興亡史〈4〉(下)」(岡部宏之訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。
1983年ヒューゴー賞受賞作品。

「銀河帝国興亡史」の第四部として、約30年振りに発表された続編です。

歴史心理学の権威ハリ・セルダンが、隆盛を誇った銀河帝国の衰亡を予測し、その後やってくる三万年の暗黒時代を千年に短縮するため、銀河系の果てに二つのファウンデーションを建設してから五百年、計画は順調に進んでいました。

しかしそれに異を唱える人物がいました。惑星ターミナスの第一ファウンデーションの若き政治家トレヴァイルです。
今や銀河帝国並みに発展したターミナスでは第二ファウンデーションは存在しないことになっているのですが、彼は持ち前の直感で第二ファウンデーションの実在と、第二ファウンデーションによる第一ファウンデーションへのコントロールを指摘します。
半ば追放状態でターミナスを飛び出した彼のパートナーは考古学者ペラロット。
彼は、知的生命の源の星と言われる『地球』を探したいと考えています。

一方、第二ファウンデーションではジェンディバルという秀才が、ある推測をします。
第一ファウンデーションを心理的に支配し、セルダンの計画通りに修正してゆくのが彼らの使命ですが、ジェンディヴァルは第二ファウンデーションすら操る第三者の存在を感じるのです。

どちらも『セルダン・プラン』の展開が順調過ぎるというところから疑問を持ち始めるのですが、このライバルとも似た者同士ともいえる二人の活躍が物語の中心。
予測どおりこの二人はある地点で出会うことになるのですが……。

作者のアシモフは50年代に書いた三部作を再読し、このシリーズが完結していないことに気づき(笑)、続編を書いたということらしいのですが、見苦しい後付け設定などなく、すんなりと物語は続いている印象。特に矛盾も感じず、その辺は違和感なし。
欲を言えば長過ぎるかなというところ。
決して水増している訳ではないのだけれど、途中でダレましたね。

それにしても前作「第二ファウンデーション」が、完結になってないことはわたしも感じましたが、この「ファウンデーションの彼方へ」もまた、それなりに決着を着けつつも、新たな謎と冒険への予感を感じさせながら終結します。

正直、まだ終わんねーのかよ/まだ続きが読めるのか!という、アンビバレンスな気分です。
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タイトル 日 時
シオドア・スタージョン「海を失った男」
シオドア・スタージョン「海を失った男」(若島正訳/晶文社)を読みました。 ...続きを見る

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2006/06/25 16:49
レイ・ブラッドベリ「火星年代記」
レイ・ブラッドベリ「火星年代記」(小笠原豊樹訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 ...続きを見る

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2006/06/24 16:55
フィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
フィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(浅倉久志訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。1967年作品。 ...続きを見る

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2006/06/10 19:03
クリフォード・D・シマック「中継ステーション」
クリフォード・D・シマック「中継ステーション」(船戸牧子訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。1963年発表のヒューゴー賞受賞作品。 ...続きを見る

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2006/06/03 17:28
フィリップ・K・ディック「去年を待ちながら」
フィリップ・K・ディック「去年を待ちながら」(寺地五一・高木直二訳/創元推理文庫)を読みました。 1966年作品。ディック自ら良く書けたと自画自賛している作品です。 ...続きを見る

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2006/05/27 18:17
シオドア・スタージョン「夢みる宝石」
シオドア・スタージョン「夢みる宝石」(厚木淳訳/ハヤカワ文庫)を読みました。1950年発表。 ...続きを見る

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2006/05/20 18:04
フィリップ・K・ディック「ドクター・ブラッドマネー」
フィリップ・K・ディック「ドクター・ブラッドマネー―博士の血の贖い―」(佐藤龍雄訳/創元SF文庫)を読みました。1965年発表作品。 ...続きを見る

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2006/05/13 13:14
アーサー・C・クラーク「白鹿亭綺譚」
アーサー・C・クラーク「白鹿亭綺譚」(平井イサク訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。1957年発表の短編集。 ...続きを見る

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2006/05/13 13:11
ハーラン・エリスン「世界の中心で愛を叫んだけもの」
ハーラン・エリスン「世界の中心で愛を叫んだけもの」(浅倉久志+伊藤典夫訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 ...続きを見る

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2006/05/06 10:00
アイザック・アシモフ「第二ファウンデーション」
アイザック・アシモフ「第二ファウンデーション ―銀河帝国興亡史〈3〉 ハヤカワ文庫SF」(岡部宏之訳)を読みました。 1953年発表。当時はこの作品で銀河帝国興亡史シリーズは一応幕を閉じました。 ...続きを見る

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2006/05/06 09:56
シオドア・スタージョン「人間以上」
シオドア・スタージョン「人間以上」(矢野徹訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 ...続きを見る

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2006/04/29 17:21
フィリップ・K・ディック「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」
フィリップ・K・ディック「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」(浅倉久志訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 ...続きを見る

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2006/04/22 17:50
アイザック・アシモフ「ファウンデーション対帝国」
アイザック・アシモフ「ファウンデーション対帝国 ―銀河帝国興亡史〈2〉 ハヤカワ文庫SF」(岡部宏之訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 銀河帝国興亡史第二弾です。1952年発表。 ...続きを見る

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2006/04/22 17:45
フレドリック・ブラウン「さあ、気ちがいになりなさい」
フレドリック・ブラウン「さあ、気ちがいになりなさい」(星新一訳/早川書房)を読みました。 ...続きを見る

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2006/04/15 11:55
サミュエル・R・ディレーニイ「バベル−17」
サミュエル・R・ディレーニイ「バベル17」(岡部宏之訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 1966年発表のネビュラ賞受賞作です。 ...続きを見る

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2006/04/08 16:24
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アイザック・アシモフ「ファウンデーション ―銀河帝国興亡史〈1〉 ハヤカワ文庫SF」(岡部宏之訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 アシモフのライフワーク「銀河帝国興亡史」の最初の一作で1951年発表。 ...続きを見る

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2006/04/08 16:21
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アイザック・アシモフ「夜明けのロボット〈上〉(下)」(小尾芙佐訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 異星を舞台にイライジャ・ベイリ刑事とロボット刑事R・ダニール・オリヴォーのコンビが活躍する、SFミステリ三部作の完結編。 ...続きを見る

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2006/04/01 17:20
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エドモンド・ハミルトンの短編集「フェッセンデンの宇宙」(中村融編訳/河出書房新社)を読みました。 収録されているのは1920年代から1960年代に発表された作品です。 ...続きを見る

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2006/04/01 17:15
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フィリップ・K・ディック「火星のタイム・スリップ」(小尾芙佐訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 ...続きを見る

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2006/03/25 17:16
アーサー・C・クラーク「都市と星」
アーサー・C・クラーク「都市と星」(山高昭訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 ...続きを見る

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2006/03/25 17:05
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シオドア・スタージョン「時間のかかる彫刻」(大村美根子訳/創元SF文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2006/03/18 15:57
手塚治虫「火の鳥5 復活・羽衣編」
手塚治虫「火の鳥 (5)復活・羽衣編」(角川文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2006/03/11 17:21
シオドア・スタージョン「輝く断片」
シオドア・スタージョン「輝く断片」(大森望編/河出書房新社)を読みました。 河出書房新社の『奇想コレクション』シリーズの、スタージョン短編集第二弾です。 ...続きを見る

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2006/03/11 17:07
フィリップ・K・ディック「高い城の男」
フィリップ・K・ディック「高い城の男」(浅倉久志訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 ...続きを見る

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2006/03/04 11:05
シオドア・スタージョン「一角獣・多角獣」
シオドア・スタージョン「一角獣・多角獣」(小笠原豊樹訳/早川書房)を読みました。 ...続きを見る

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2006/03/04 11:01
アイザック・アシモフ「はだかの太陽」
アイザック・アシモフ「はだかの太陽」(冬川亘訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 「鋼鉄都市」で活躍したイライジャ・ベイリ刑事と、惑星オーロラの刑事ロボットR・ダニール・オリヴォーが事件を担当するシリーズ第二弾です。 ...続きを見る

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2006/02/26 15:33
シオドア・スタージョン「不思議のひと触れ」
シオドア・スタージョン「不思議のひと触れ」(大森望編/河出書房新社)を読みました。 ...続きを見る

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2006/02/25 17:57
「20世紀SF〈1〉1940年代―星ねずみ」
「20世紀SF〈1〉1940年代―星ねずみ」(中村融・川岸真編/河出文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2006/02/25 17:39
アイザック・アシモフ「鋼鉄都市」
アイザック・アシモフ「鋼鉄都市」(福島正実訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 ...続きを見る

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2006/02/18 11:27
手塚治虫「火の鳥2 未来編」
手塚治虫「火の鳥 (2) 未来編」(角川文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2006/02/11 12:27
A・E・ヴァン・ヴォクト「スラン」
A・E・ヴァン・ヴォクト「スラン」(浅倉久志訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 ...続きを見る

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2006/02/11 12:20
A・E・ヴァン・ヴォクト「宇宙船ビーグル号」
A・E・ヴァン・ヴォクト「宇宙船ビーグル号」(浅倉久志訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 ...続きを見る

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2006/02/04 17:45
フィリップ・K・ディック「時は乱れて」
フィリップ・K・ディック「時は乱れて」(山田和子訳/サンリオSF文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2006/02/04 17:39
サミュエル・R・ディレイニー「アインシュタイン交点」
サミュエル・R・ディレイニー「アインシュタイン交点」(伊藤典夫訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 ...続きを見る

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2006/01/28 14:03
フィリップ・K・ディック「虚空の眼」
フィリップ・K・ディック「虚空の眼」(大瀧啓祐訳/創元推理文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2006/01/28 13:59
アルフレッド・ベスター「虎よ、虎よ!」
アルフレッド・ベスター「虎よ、虎よ!」(中田耕治訳/ハヤカワ文庫SF)を読みました。 ...続きを見る

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2006/01/21 17:48
アルフレッド・ベスター「分解された男」
アルフレッド・ベスター「分解された男」(沼沢洽治訳/創元SF文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2006/01/21 17:40
フィリップ・K・ディック「ジョーンズの世界」
フィリップ・K・ディック「ジョーンズの世界」(白石朗訳/創元SF文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2006/01/14 17:01
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「愛はさだめ、さだめは死」
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「愛はさだめ、さだめは死」(伊藤典夫・浅倉久志訳/ハヤカワ文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2006/01/14 16:54
フレドリック・ブラウン「火星人ゴーホーム」
フレドリック・ブラウン「火星人ゴーホーム」(稲葉明雄訳/ハヤカワSF文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2006/01/07 14:19
「フィリップ・K・ディック・リポート」他〜2006年SFの旅〜
「フィリップ・K・ディック・リポート」(早川書房編集部編)を読みました。 ...続きを見る

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2005/12/31 18:17
ジャック・フィニィ「盗まれた街」
ジャック・フィニィ「盗まれた街」(福島正実訳/ハヤカワ文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/09/10 17:45
レイ・ブラッドベリ「何かが道をやってくる」
レイ・ブラッドベリ「何かが道をやってくる」(大久保康雄訳/創元SF文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/09/10 17:31
ロバート・ネイサン「ジェニーの肖像」
ロバート・ネイサン「ジェニーの肖像」(大友香奈子訳/創元推理文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/07/16 16:56
カート・ヴォネガット・ジュニア「猫のゆりかご」
カート・ヴォネガット・ジュニア「猫のゆりかご」(伊藤典夫訳/ハヤカワ文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/07/09 17:34
ロバート・A・ハインライン「夏への扉」
ロバート・A・ハインライン「夏への扉」(福島正実訳/ハヤカワ文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/06/11 20:20
戸田尚伸「惑星をつぐ者」
戸田尚伸(たかのぶ)「惑星をつぐ者」(ジャンプ・コミックス)を読みました。再読です。 ...続きを見る

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2005/05/29 09:51
J・P・ホーガン「星を継ぐもの」
J・P・ホーガン「星を継ぐもの」(池 央耿訳/創元推理文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/05/28 17:03

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