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zoom RSS テーマ「ホラー」のブログ記事

みんなの「ホラー」ブログ


「乱歩の選んだベスト・ホラー」

2006/09/10 23:58
乱歩の選んだベスト・ホラー」(森英俊・野村宏平編/ちくま文庫)を読みました。

最初に江戸川乱歩の書いたエッセイ「怪談入門」が収録されており、その中で触れられている数多くの怪談小説のうち、選ばれた11作に加えて、最後に乱歩本人による作品が収められているアンソロジーです。

これらの11作が選ばれた根拠というのは良くわからず、『ベスト・ホラー』というには看板に偽りありかな、と思ったりもします。

収録作品はヴァラエティに富んでいて、有名作ジェイコブズ「猿の手」エーベルス「蜘蛛」、初訳のベンスン「歩く疫病」コリンズ「ザント婦人と幽霊」、横溝正史の訳による珍品アルデン「専売特許大統領」など。
基本的にスコットランドやアイルランドの小説家も含めて、イギリス系の作品が多い。
古い怪談はやはりイギリス系ですね。

非常にまっとうな怪談と思われるのは、「猿の手」とオリファント「廃屋の霊魂」。
後者は、隣の荒れた無人の屋敷から夜な夜な「ああ、かあさん入れておくれ!ああ、かあさん、かあさん、いれておくれったら!……」と哀しげな懇願の声が聞こえてくるという話。

ダンセイニ「災いを交換する店」とアルデン「専売特許大統領」は、タイトル通りの話で、まさに奇想小説。

マクドナルド「魔法の鏡」は、鏡の中だけに現れる美女と学生の恋を描いたもの。
これも怪談というよりは、美しくも悲しい物語です。

映画「ゴースト」を思わせる(観てないけど)、コリンズ「ザント婦人と幽霊」はこれまた怖くないのだけれど、ヒロインと主人公の娘の描き方が非常に巧み。
ウィルキー・コリンズという小説家は個人的に非常に気になります。
いずれまとめて読んでみたい。

最後に収録されている江戸川乱歩「目羅博士」は正直言って微妙かなと。
もちろん江戸川乱歩を軽く見ている訳ではないですよ。
「孤島の鬼」「陰獣」「屋根裏の散歩者」「押し絵と旅する男」など、昔良い(?)思いをさせていただきました。
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スティーヴン・キング「ダーク・タワー<3>荒地」

2006/09/03 16:27
スティーヴン・キング「ダーク・タワー〈3〉荒地〈上〉〈下〉」(風間賢二訳/新潮文庫)を読みました。

今週小学生たちは夏休みの宿題に追われていたことと思いますが、わたしも宿題に追われていました。
といっても、サボったところで誰にも怒られませんが。
「ダーク・タワー」シリーズ続編、半年振りに読みました。

拳銃使いローランドは仲間になったエディ、スザンナとともに暗黒の塔を目指す旅を続けています。
第二部ではロブスターの化け物の毒に侵され苦しんだローランド、今度は二重の記憶のために発狂しそうになっています。
一方彼らのいる世界と違うわれわれが暮らす世界では、第一部に出てきた少年ジェイクも似た症状に悩まされていて……。

この第三部では、遂に暗黒の塔への道しるべが現れます。
そして新しい仲間の加入。
ひとりは予測通り、ローランドを慕うジェイク少年。
そしてもうひとりというか、一匹というべきでしょうが、犬を思わせる賢さと忠誠心を持った小動物ビリー・バンブラー(名前は『オイ』)。

このオイが良いんですよねぇ。
人の言うことをオウムのように反復する習性があって、ジェイクにしか懐いていない。
途中でローランドがオイの死を予測する場面では悲しくなりました。

向かうべき道がはっきりし仲間も揃った。やっと物語が軌道に乗った感じです。
しかしながら、前二作を読んだときに感じた不安はそのまま。

登場人物のリアリティが薄い感じがしますね。
ひいきのエディはわかり易い性格ですが、敵役のチクタクマンの薄っぺらさ加減とか、ジェイクのベタなガキキャラ振りが気になります。
頭にパラボラアンテナを付けた70フィートの熊の化け物とか、なぞなぞが好きなイカれたモノレールとかも、興ざめ感強し。

はあ、これがあの「グリーン・マイル」を書いたキングの作品とは。
いや、しかし、第四部からは面白くなるに違いない。
たぶん、きっと。
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マーク・トウェイン「不思議な少年」

2006/08/27 23:57
マーク・トウェイン「不思議な少年」(中野好夫訳/岩波文庫)を読みました。
作者の死後、1916年発表。

1590年オーストリアのある村。季節は冬。
当時少年だった『わたし』は親友ふたりと森で遊んでいた時、不思議な少年に出会います。
彼は驚くほどの美貌と美声の持ち主で、話も巧み、そして無から有を生み出す能力を持っていました。
名はサタン。イブを誘惑したあの堕天使サタンの甥にあたり、その正体は天使だというのです。

サタンは一体何者なのか、という話ではありません。
この小説の中での彼は文字通り天使です。
一瞬のうちに『わたし』を中国まで連れて行ってくれたり、人の運命を変える力を持っています。
そのサタンとの関係の中で『わたし』は人間というものの本性を見せつけられる。
犬や馬のような動物と違って、良心(偽善の心)とか悪のような考えを持つ人間の愚かさと惨めさをサタンは主張します。

彼は天使であり、人間とは別のレベルにある存在。
そんな彼からすれば、人間など取るに足りない存在なのです。
例えば蟻のような。
わたしたちが歩いている時蟻を踏み殺しても何も感じないが、蟻塚を見たときは少しばかり興味を抱く……サタンにとって人間とは、その蟻のようなものなのです。

晩年不幸が続き厭世的になっていたと伝えられるトウェインの本音が寓話的に語られる作品です。
しかしサタンが非常に魅力的に描かれており、陰惨さは感じられません。

今日テレビでは毎年恒例の24時間テレビ「愛は地球を救う」を放送していました。
一年がかりで一生懸命お小遣いを募金に回した小学生などを見ると胸が一杯になりますが、サタンだったらどう答えるでしょうか?
わたしの考えではこうです。
「知っているかい?あの司会者のギャラは数千万円だってさ」。
「達成力のなさそうなタレントをあえて選んでマラソン?走って何か意味があるのかな。自動車を使えば良いじゃないか。実際放送されてないところでは使ってるんだし(笑)」。
そんなところでしょうか。
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ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」

2006/08/20 17:26
ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(平井呈一訳/創元推理文庫)を読みました。1897年発表。

ルーマニアの貴族ドラキュラ伯爵がイギリスの屋敷を購入する件で、弁理士ジョナサン・ハーカーはトランシルヴァニアの彼の屋敷を訪れます。
ドラキュラに会見し、どうもおかしな人物だなと思ったハーカーですが、屋敷に軟禁されてしまいます。

一方イギリス。
一日のうちに三人もの若者にプロポーズされたルーシー。
彼女は夢遊病の気があり、友人のミナを心配させていました。
ある晩ミナの監視を抜け出して外へさまよい出たルーシーは、発見された時その美しい首に二つの小さな傷跡を付けられていました。

求婚者の一人セワード医師はどうしてもその傷を治療することができず、恩師であるアムステルダム大学のヴァン・ヘルシング教授を招きます。
教授は多くを語りませんが、何か思い当たる点があるらしい。
後に語られた事実は、到底信じられないものでした。

レ・ファニュ「吸血鬼カーミラ」の影響下書かれたこの作品は、当時の人気作家だったコリンズの「月長石」と同様、日記や手紙、電報などで構成されています。
後半陸路水路と三方向からドラキュラ伯爵を追いつめてゆくくだりは、目まぐるしく語り手が変わり、映画でいうカットバックのような効果があります。当時としてはかなり斬新な手法かも知れません。
とはいえ、のんびり感は否めません。

登場人物は型にはめたようなステレオタイプの人が多いです。
ルーシーとの結婚を希望する三人は典型的イギリス紳士アーサー(本命)、行動的なアメリカ人キンシー、インテリのセワードと、けっこうベタです。
加えて、情熱を内に秘めつつ表面は冷静沈着なヘルシング教授。屋敷を脱出した努力家のハーカー、彼の妻でルーシーの幼馴染みミナ。
彼ら6人が神の御加護の元、邪悪の化身ドラキュラ伯爵を追い詰めるわけです。
ホラーとしての怖さより、この信心深い彼らの強い絆と使命のほうが強調されている感じですね。

書かれた時代が時代ですし、構成も主に日記の羅列ということで物語は遅々として進みません。
読者としてはこの辺を許せるかどうか。
また翻訳はこの道の泰斗である平井呈一によるものですが、『飯屋』とか『横町』のような表現の古さを許せるかどうか。
とりあえず新訳は出ているようですが。

古典を読むときはそれなりの心構えが必要かもしれません。
わたし個人は古い翻訳に慣れているので不満はありませんでした。
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メアリ・シェリー「フランケンシュタイン」

2006/08/12 21:33
メアリ・シェリー「フランケンシュタイン」(森下弓子訳/創元推理文庫)を読みました。
1818年発表。この翻訳は1831年の第三版から。

雷鳴轟く深夜、ドイツの某研究所で鬼気迫る表情のマッド・サイエンティストが人造人間の創造に成功、フランケンシュタインと命名します。
しかしフランケンシュタインは怪力と邪悪な精神の持ち主で、生まれた直後博士を殺めると街へ飛び出します。
パニック状態に陥った街中で破壊と殺人にいそしむフランケンシュタイン。
この化け物と警官たちとの戦闘が始まり……。

……というのがわたしの「フランケンシュタイン」という作品のイメージ。
しかし読んでみると、全然違うんですよね。

まずフランケンシュタインというのは、ジュネーブに住む、向上心と希望に溢れたひとりの優秀な学生の名。
彼の好奇心によって生み出された怪物に名前はありません。
また、怪物には亀やワニほどの知性しかないと思っていたのですが、これも間違い。
誕生当初はともかく、フランケンシュタインと再開した頃には人間らしい感情と知性に加えて、強い意志を持った存在と化しています。

この怪物の悲劇は人間らしい感情を持ってしまったことから生まれます。
あまりの醜さに人から恐れられ忌み嫌われる彼は人生を呪い、自分を生み出したまま遁走したフランケンシュタインに復讐することを決意します。
無計画に通り魔のように人を殺すのではないのです。
フランケンシュタインの大切な人物を一人一人と殺し、彼を苦しめようとするのです。
一方フランケンシュタインは恋人との結婚をまじかに控えていました。

「フランケンシュタイン」はSF小説の起源と言われると同時に恐怖小説の古典でもあります。
これほど有名な作品でありながら、実際に読んだ人はあまり多くなく数々の誤解をされてきました。
ここで語られるのは好奇心からまがい物の神となってしまった男が、復讐の鬼と化した怪物から与えられる苦痛と苦悩です。
同時にそこにしか目的を見出されない醜く孤独な怪物男の不幸。

作者のメアリ・シェリーは英ロマン主義の詩人シェリーの奥さん。
これは知っていました。
しかし彼女がこの作品を書いたのが19歳の時というのは初耳。
嫌な19歳だな(笑)。
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コナン・ドイル「北極星号の船長」

2006/08/06 18:48
コナン・ドイル「北極星号の船長 <ドイル傑作集2>」(北原尚彦・西崎憲編/創元推理文庫)を読みました。
「ドイル傑作集2」とありまして、コナン・ドイルの怪奇小説家としての一面にスポットライトを当てた短編集です。

ドイルというとわたしなどホームズ物しか読んでいないんで、どういう感じかなと興味がありました。
「バスカヴィル家の犬」などはちょっとオカルトでしたが。

で、この短編集、看板に偽りなしで本当に「怪奇小説」しか採録されていません。
しかもフォローしている範囲が広い。
いわゆるウーマというんですか……未発見の怪獣、降霊術、呪術など。

前半に収められている「大空の恐怖」「青の洞窟の恐怖」などは、プチ秘境ものというか、見たこともない化け物に襲われるという話。
面白いのは後者では、怪物に関しての考察があるところ。
ただ怪物が出たというだけでなくて、主人公がその怪物の生態に科学的な分析をするんです。

晩年息子を失った悲しさからオカルトにのめり込んでいったと伝えられるコナン・ドイルですが、ただ不思議を不思議なまま終わらせず、現象を科学的に解釈しようという態度が仄見えて興味深い。
「深き淵より」は海の幽霊話で、一応合理的な解釈が語られるのだけれど、そちらの解釈の方が怖いという奇妙な読後感。

「樽工場の怪」はミステリ的な興味でも読める作品。
密林の工場で夜番をしている者が跡形もなく消えるという事件が連続する。
最後の数ページで謎が明らかになるのですが、なるほどホームズの生みの親の作品だと納得。

「ヴェールの向こう」「いかにしてそれは起こったか」は現代の日本ではショート・ショートとも呼べるボリューム。前者は後味の悪さが良い。
訳文も良いですが、話の持って行き方がドイルという人は巧いですね。
最後に収録されている「寄生体」は呪術を扱った本格的ホラー作品。傑作です。

個人的に面白かったのは「火遊び」。
降霊術を扱った話なのですが、悪乗りし過ぎというか、衝撃的いや笑劇的な話です。

オカルト興味に溺れることなく科学的な態度も崩さないバランス感覚。
コナン・ドイルはシャーロック・ホームズの生みの親というだけではなく、非常に優れたストーリーテラーとして認識されるべき小説家だと思いました。
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「日本怪奇小説傑作集3」

2006/07/30 18:43
日本怪奇小説傑作集 3」(紀田順一郎・東雅夫編/創元推理文庫)を読みました。
収録されているのは昭和35年から平成5年までに発表された17編。

この3巻に至ると、作者の名前を知っているどころか、昔読んだ作品もあります。
半村良「箪笥」筒井康隆「遠い座敷」など。どちらも日本家屋の特殊さを巧く利用した作品です。
小松左京「くだんのはは」など、未読なのにしっかりストーリーを知っていたという。

「箪笥」は地元の老婆が方言丸出しで語る不思議な話で、やはり怪談は語り口だよなあと思わせます。

逆にその語り口というか文体が独特で読みにくかったのが、稲垣足穂「山ン本五郎左衛門只今退散仕る」と、吉田健一「幽霊」。
前者は漢字とカタカナの混交文。ある屋敷で毎晩発生するポルターガイスト現象の話。妙に呑気でユーモアのある話です。
後者はロマンティックな幽霊譚ですが、凄まじい悪文。
わたしは吉田氏の翻訳で幾度もお世話になっているけれども……これは酷い凄いとしか言いようがありません。

やはり翻訳家のイメージが強い澁澤龍彦「ぼろんじ」。
てっきり専門のヨーロッパ系の話かと思ったら江戸時代を舞台にした話です。

最もグッと来たのは次の二作。
荒木良一「名笛秘曲」と赤江瀑「海贄考」。
前者は本職の小説家ではないようですが、おぞましさと官能を微妙なバランスで配置した物語の構成美が見事。
後者は主観と客観のズレがポイントです。
漁村にやって来て心中に失敗し、生き残ってしまった男の周りで起こる異変。
それについて男の視点と、三人称の視点があり、事実を知るとゾクッと来ますね。

阿刀田高「縄―編集者への手紙―」。
阿刀田氏はわたしにとっては優れたエッセイイスト、アンソロジー編集者というイメージ。
このタイプの小説家は当たり外れが少なく、特別な一編を選ぶのは難しいのではないかと憶測しました。「門のある家」の星新一もしかり。
ちなみに昔彼が編んだ「恐怖特急」というアンソロジーを読んだことがありますが、あれは良かった。
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「日本怪奇小説傑作集2」

2006/07/23 13:37
日本怪奇小説傑作集 2」(紀田順一郎・東雅夫編/創元推理文庫)を読みました。

昭和10年から36年までに発表された怪奇短編を集めたもので、第一巻の大正ロマンというか、古典文学的な面子や作風は影をひそめています。

序文で紀田順一郎が、日本と西洋の怪談の相違について触れていますが、実際海外の作品の影響も感じられます。
冒頭の二作城昌幸「人花」横溝正史「かいやぐら物語」は偶然かどうかは知らないけれども、コリアやフォークナーの短編を思わせます。
三橋一夫「夢」は明らかにアンブローズ・ビアスの本家取りと考えられる作品。
火野葦平「怪談宋公館」中島敦「木乃伊」日影丈吉「猫の泉」 などはそのまま外国が舞台です。

それにしても横溝正史「かいやぐら物語」は非常に幽玄でロマンチックな話。
個人的には「エミリーに薔薇を」よりは「かいやぐら物語」ですかね。
金田一ものは一通り読んだんですが、こっちの方が本領だったりして。
アンソロジーというのはこういう発見があるところが良いんですよね。

また、妖怪幽鬼とは無縁の話も収録されています。言ってみれば生きている人間の怖さ。
角田喜久雄「鬼啾」三島由紀夫「復讐」円地文子「黒髪変化」などがそれにあたります。

これらの作品を『怪奇小説』と呼ぶということは、編者の怪奇小説に対する定義の広さを感じますが、わたし的にこれぞ怪奇小説だと感じたのは、西尾正「海蛇」 山田風太郎「人間華」の二作でしょうか。
エロ・グロ・ナンセンスがわたしの怪奇小説に対するイメージ。
バカバカしさと紙一重な感じがするのがポイントです(笑)。

読んで良かった!と思ったのは先述の横溝正史「かいやぐら物語」と、橘外男「逗子物語」そして山本周五郎「その木戸を通って」。
「逗子物語」は正統的な怪談。
「その木戸を通って」は江戸時代の話ですが、和風ファンタジーとも命名すべき佳編。
レイ・ブラッドベリあたりの作品が好きな人にはグッとくるでしょう。

好きなコーネル・ウールリッチの作品を換骨奪胎した小説もあるということで、山本周五郎の作品群もいずれ読んでみたいと思いました。
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「日本怪奇小説傑作集1」

2006/07/16 17:02
日本怪奇小説傑作集1」(紀田順一郎・東雅夫編/創元推理文庫)を読みました。
2005年発表。同文庫のロングセラー「怪奇小説傑作選」の日本版。
この第一集は明治35年から昭和10年までに発表された作品を17作収めています。

去年ホラーばかり読んでいた頃、ホラーは語り口が大切だと思い、翻訳ものばかりではなく日本の小説も読んだのですが、現在の小説家に語り部的な文体を期待する方が間違いでした。
話の内容も期待するものとは違う。
例えばわたしには幽霊というと、髪の長い白い着物の若い女のイメージがあります。
しかし今時そんな幽霊出ませんよね。
髪の長い若い女性はいるだろうけど、着物着ている人は少ない(笑)。

そんなわけで、小泉八雲から泉鏡花に夏目漱石、その弟子の芥川龍之介と内田百閨A森鴎外や川端康成などの名文章家たちの怪奇短編を集めたこのアンソロジーを読みました。

たった100年位前の作品群なのに、なんか世界が違うというか、日本人の意識や風俗の変化って早いものだなあと思いました。
アイデンティティに欠ける国民性とはいえ、これほどまでの別世界かと。
わたしが翻訳小説や奇人変人の話に惹かれるのは、自分からできるだけ遠い世界観や人生観に触れたいからだと思うのですが、少し前の日本はまさに外国ですね。

さて収録作品の感想です。
代表作を読んだことのある江戸川乱歩「鏡地獄」や夢野久作「難船小僧」は相変わらずというか久しぶりと言う感じ。
恥ずかしながら初読の小泉八雲「茶碗の中」は、編者紀田順一郎の師匠平井呈一の翻訳。
茶碗の中に人の顔が浮かぶという話で、じんわりと良い。
岡本綺堂の「木曾の旅人」もどうという話ではないが味わい深く、必読リストに入れました。
夏目漱石と森鴎外はともに「蛇」という題の作品。そういえばスタインベックにも同名の異様な話がありました。

個人的にグッと来たのは次の二作。
谷崎潤一郎「人面疽」と室生犀星「後の日の童子」。
前者は主演女優自身が撮影した記憶がないという出所不明の映画の話で、まさに怪談ですね。知らないうちに人々の知るところとなってゆくところが怪談の性質。
後者は怪奇というより物悲しい話です。
亡くなった幼い息子が両親のもとに度々訪ねて来るという話で、実際室生犀星は我が子を失っているというエピソードを読むと何とも切ない気持ちが伝わってきます。

ラストに収録されているのは「文学の極意は怪談である」という言葉を残した佐藤春夫「化物屋敷」。実話だそうです。
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ヘンリー・ジェイムズ「ねじの回転」

2006/07/09 23:55
ヘンリー・ジェイムズ「ねじの回転 -心霊小説傑作選-」(南條竹則・坂本あおい訳/創元推理文庫)を読みました。

夏になったので、怖い話を読もうと思います。
去年も今頃ホラーばかり読んでいたのですが、今年は怪談というか怪奇小説的なものを読んでいこうかなと。
特に古いものを読もうと考えています。

「ねじの回転」は非常に難解で、幾通りの読み方が可能だそうです。
しかしわたしは単純に恐怖譚としてして読みました。
幾度も、これは繊細で感受性の強い女性主人公の妄想ではないかと思いましたが……。

この作品は20年前になくなった女性の手記という形をとっており、それによると事件当時彼女は二十歳前後、二人の幼い兄妹を教育するため大きな屋敷に赴任しました。
兄妹はそれはもう美しく、利発で、彼女もまた自分の仕事に満足していたのですが、時折謎の男女の姿を見るようになり、女中頭のグロース夫人に相談します。
どうやら、男の方は昔館にいた召使、女性の方は主人公の先任の家庭教師のようです。
当時ふたりはただならぬ関係にあり、現在はふたりとも亡くなっているという。

子供たちを誘惑し堕落させようとするのがふたりの狙いだと感じた彼女は、子供たちを守るために奮闘します。
しかし子供たちは既にふたりに魅了されており、彼女が子供たちを救おうとすればするほど、その関係に距離ができてゆきます。

子供たちの一挙一動に過剰に反応し、そこから何かのサインを探そうとする主人公。
こうなるともう、ノイローゼ一歩手前の心理状態です。

しかしこの心理状態、何かの心理に似ているなと思ったら、恋愛のそれに似ている。
そういえばこの手記の提供者は、彼女が恋をしていたことを指摘していますが……。

他にも幽霊が家賃を払う(笑)「幽霊貸家」や、書かれる本人が伝記作家に干渉してくる「本当の正しい事」など、四作の短編を収録しています。
ジェイムズの作品は悪文で難渋難解、理解するのが難しいとのことですが、わたしには読み易かったです。
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タイトル 日 時
シオドア・スタージョン「きみの血を」
シオドア・スタージョン「きみの血を」(山本光伸訳/ハヤカワ文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2006/06/18 14:02
シャーリー・ジャクスン「くじ」
シャーリー・ジャクスン「くじ」(深町眞理子訳/早川書房)を読みました。 ...続きを見る

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2006/04/23 15:52
スティーヴン・キング「ダーク・タワー〈2〉運命の三人」
スティーヴン・キング「ダーク・タワー〈2〉運命の三人〈上〉(下)」(風間賢二訳/新潮文庫)を読みました。 ストーリーや設定を、いつもよりバラしています。読んでいない方はご注意を。 ...続きを見る

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2006/03/18 15:50
スティーヴン・キング「ダーク・タワー1 ガンスリンガー」
スティーヴン・キング「ダーク・タワー1 ガンスリンガー」(風間賢二訳/新潮文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2006/02/18 11:24
スチュアート・ウッズ「湖底の家」
スチュアート・ウッズ「湖底の家」(矢野浩三郎訳/文春文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/10/16 18:40
ロバート・R・マキャモン「スワン・ソング(上)(下)」
ロバート・R・マキャモン「スワン・ソング〈上〉(下)」(加藤洋子訳/福武書店)を読みました。 ...続きを見る

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2005/09/24 16:21
乙一「暗黒童話」
乙一「暗黒童話」(集英社文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/09/24 16:15
スティーヴン・キング「第四解剖室」
スティーヴン・キング「第四解剖室」(白石朗・他訳/新潮文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/09/17 18:16
ジェームズ・ハーバート「月下の恋」
ジェームズ・ハーバート「月下の恋」(宇佐和通訳/学習研究社)を読みました。 ...続きを見る

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2005/09/17 18:03
ジャック・フィニィ「盗まれた街」
ジャック・フィニィ「盗まれた街」(福島正実訳/ハヤカワ文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/09/10 17:45
レイ・ブラッドベリ「何かが道をやってくる」
レイ・ブラッドベリ「何かが道をやってくる」(大久保康雄訳/創元SF文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/09/10 17:31
坂東眞砂子「死国」
坂東眞砂子「死国」(角川文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/09/03 17:20
鈴木光司「仄暗い水の底から」
鈴木光司「仄暗い水の底から」(角川ホラー文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/09/03 16:59
ウィリアム・ヒョーツバーグ「堕ちる天使」
ウィリアム・ヒョーツバーグ「堕ちる天使」(佐和誠訳/ハヤカワ文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/08/27 17:16
ジョン・ソール「暗い森の少女」
ジョン・ソール「暗い森の少女」(山本俊子訳/ハヤカワ文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/08/27 17:13
村上龍「イン ザ・ミソスープ」
村上龍「イン ザ・ミソスープ」(幻冬舎文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/08/20 18:46
村上龍「オーディション」
村上龍「オーディション」(幻冬舎文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/08/20 18:36
ピーター・ストラウブ「ゴースト・ストーリー」
ピーター・ストラウブ「ゴースト・ストーリー(上・下)」(若島正訳/ハヤカワ文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/08/13 18:12
ディーン・R・クーンツ「マンハッタン魔の北壁」
ディーン・R・クーンツ「マンハッタン魔の北壁」(沢川進訳/角川ホラー文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/08/13 17:46
ディーン・R・クーンツ「ファントム」
ディーン・R・クーンツ「ファントム(上・下)」(ハヤカワ文庫/大久保寛訳)を読みました。 ...続きを見る

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2005/08/06 15:25
スティーヴン・キング「シャイニング」
スティーヴン・キング「シャイニング〈上〉・下)」(深町眞理子訳/文春文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/08/06 15:21
貴志祐介「黒い家」
貴志祐介「黒い家」(角川ホラー文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/07/30 20:02
ガストン・ルルー「ガストン・ルルーの恐怖夜話」
ガストン・ルルー「ガストン・ルルーの恐怖夜話」(飯島宏訳/創元推理文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/07/30 19:14
岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」
岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」(角川ホラー文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/07/23 18:15
小池真理子「墓地を見おろす家」
小池真理子「墓地を見おろす家」(角川ホラー文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/07/23 17:57
シャーリイ・ジャクスン「山荘綺談」
シャーリイ・ジャクスン「山荘綺談」(小倉多加志訳/ハヤカワ文庫)を読みました。 ...続きを見る

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2005/07/16 16:54

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