村上龍「THE MASK CLUB」

村上龍「THE MASK CLUB」(幻冬舎文庫)を読みました。

付き合っている女の秘密を探ろうと、豪奢なマンションの一室に忍び込んだ主人公。
入室した途端に何者かに刺殺され、死体は素早く処理されてしまいます。
感受と思考の能力だけを持つ極小の存在となった彼がその部屋で見たものは、七人の女たちによって繰り広げられる性的遊戯でした。

死者が語る物語。
不可視な存在なら幽霊で十分だし素直に三人称で書けばいいのでは?と思うのですが、作者は敢えて主人公を虫のような小さな存在として設定しました。
物語の展開上そうせざるを得ないのです。
また、主人公を含む『男』たちそのものを矮小化して描写しようという作者の意図がそうしたのでしょう。
この作品内で語られる男たちは情けなく物欲しげな人物ばかりという感じです。

じゃあ女たちが活き活きしているかというとそうでもないのです。
主人公は人の体内に侵入し、その記憶や感情を共有することが出来るのですが、それによって彼女たちの過去やトラウマ、性的な秘密クラブを立ち上げなければならなかった必然がわかるのです。けっこう重い。
記憶の中の映像的な描写を読んでいたら、村上龍の大昔の作品「海の向こうで戦争が始まる」を思い出しました。

村上龍の描く女性は皆何かを探しに海外へ向かったり、自分の生き方を模索するために何かと戦っていることが多いですね。
『女もつらいよ』ということでしょうか。

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